磁気テープの話(2)

強磁性体(例えば縫針)を磁石で摩擦すると、針は磁化されて磁石になる。これと同様に録音テープは磁化されやすい性質を持っているので、テープに磁石を近づけると、その部分が磁性を帯び小さな磁石となり、磁石を取り除いても残留磁気が残る。例えば馬蹄形磁石(NとS)を近づけるとテープには反対の極性の残留磁気(SとN)が残り、磁石を動かすと、テープのその部分はすべて同じ向きの磁化力を受けて、長い磁石をして残る。なお、移動中に磁石の向きを逆にした時、その点にて、テープの極性も反対になり二つの逆向きの磁石となる。

永久磁石の代わりに鉄心にコイルを巻いた電磁石を使い、磁石を動かす代わりにテープを走らせる。そして電磁石を流れる電流の向きを途中で逆にすると、やはりその点でテープの極性は逆になり電流の向きの変化がテープ上の変化として記録される。同様に電流の大きさが変われば、それはテープに残る磁石の強さの変化として残る。これが録音の基本的な原理である。

さて、実際に録音するには、音をマイクロフォンで受けて、これを電気の流れに変え、さらに増幅器により拡大し、この増幅された電流を電磁石にながす。(この電磁石を録音ヘッドと呼ぶ)テープに音の変化を忠実に極力小刻みに磁化録音をするために(高い周波数まで録音するために)数ミクロンという極めて狭い磁気間隔を持つものが用いられる。そしてこの間隔に接してテープを一定の速さで走らせると、音の強弱や高低に応じてテープ上に磁化の強弱や長短となって記録される。

再生の場合は、録音されたテープを一度まきもどして、再び電磁石上(再生ヘッドと呼び、録音ヘッドと兼用している場合もある)の間隔に沿って一定の速さで走らせると、テープ上の磁化の強弱、高低に応じた誘導起電力が再生ヘッドに発生する。これは発電機の発電原理と同じであって、起電力の強さはテープに残っている磁界の強さに比例する。この再生ヘッドに誘起された電流を増幅器で拡大しスピーカーを鳴らす。

磁気録音の特徴は一度録音したテープを消去して何度も録音できる点にある。テープ上の録音(磁化)を消去する方法には、@零消去法A飽和消去法がある。

零消去法は、黒板に書かれた文字を消し去る方法に似ており、消去ヘッドに高周波電流を流した時に発生する磁力線によりテープがヘッドを通過する際、ヘッドの磁極間隔の中央部で飽和値まで磁化され、その後次第に漸減する交番磁界により消滋される。

飽和消去法とは、あたかも黒板に書かれた文字をチョークで塗りつぶす方法に似ていて、消去ヘッド通過後、飽和まで磁化されることにより消滋される。