中部ESS編集者 殿
 大変ご無沙汰致して失礼致しております。記事掲載の要請を頂き筆を取ろうとするも、
何かと雑用にかまけ投稿出来ず失礼しました。5月の長連休も明け、漸く筆を取る事を始めました。
この投稿は、モバイルギアによる電子メール記事とさせて頂きます。内容にご満足頂ける物には
成らないとは思いますが、ご了承願うことと致します。       1999.5吉日 

水野 巌
タイトル:セラミック四方山話し(1)

 私の卒業(1974年3月)の頃より、日本の産業技術者はセラッミクに興味を持ち、様々な取組みを
始めたのではないかと記憶しております。以降、大きなブームが2回起こり、現在は沈静状態に
あるのではと感じております。
私のの会社人生も25年となり、約1/4世紀をセラミックと共に過ごした計算となります。その間、
セラッミクブームの火付け役を演じたり、確かな商品の開発を行ない、日本産業界に何らかの形で
貢献出来たのではないかと思っております。
それでは、第一回としてのお話をさせて頂きます 

-----------陶磁器とファインセラミックス-----------------

 セラミックス(ceramics)とは焼き物であり、ESSの皆様は「陶磁器」と認識されておられる事と存じます。
産業に携わる私共は、陶磁器をトラディショナルセラミックスとかクラシックセラミックスと呼称しております。
これに対して、ファインセラミックスとかニューセラミックスと呼称し大別しております。以後、文章はファイン
セラミックスと呼称します。 

  *一つの主原料でがんばるファインセラミックス 陶磁器の原料では、珪石、粘土、及び長石の三要素が
不可欠です。各々の役割は、骨格成分として優れた特性を発揮する珪石、成形保持の為の粘土、焼結の為
の長石という具合の天然原料です。
しかし、特性だけを考えた場合に必要な成分は一つです。ファインセラミックスも当初はやはり三要素が必要
でしたが、主原料の純度を高め、粒径を極めて細かく(数ミクロン以下)する事により、ほぼ一つの成分だけで
製品が出来る様になり、優れた特性が発揮できる様になりました。
主な原料は、アルミナ(Al2O3)、チッ化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)等であります。

   *固めたり押し込んだり、いろいろな成形法 成形の方法は、陶磁器では主として湿式によるろくろ成形や
流し込み成形法(鋳込み成形法)です。ファインセラミックスでは鋳込み成形法もありますが、その他にも多彩な
製法があります。顆粒粒の原料に上下から押し鮨のように力を加える乾式プレス法、原料をゴム型に入れて
水中、又はオイル中で四方八方から締め付ける加圧成形法(焼成中にも力を加え続ける方法もあります。)、
プラスティック製品を作ると同じようにバインダーの入った原料に熱を加えて柔らかくして型の中に押し込む
射出成形法、ガムのような薄板を作るには泥水状の原料をわずかな隙間から連続的に出してシートにしてい
くドクターブレード法などがあります。

   *高い温度で焼くとファインセラミックス ファインセラミックスの焼成温度は陶磁器に比べてかなり高く、
千七百度氏を越えるものです。ですから焼成した物は、非常に硬くそのまま製品なる場合はよいのですが、
寸法や表面の粗さに高精度の要求があって仕上げることは大変で、コストもアップしてしまいます。  

 *ファインセラミックスは日本語? ところで、このファインセラミックスという言葉は、ナイターなどと同じ
和製英語なのです。
英語ではアドバンストセラミックスとか、ハイテクノロジーセラミックスとなりますが、精製された微細な原料や
厳密に制御された工程から作られることを考えますと、ファインという言葉のほうがぴったりだど思いますが
如何でしょうか。

   *ファインセラミックスの主な特長 大部分のファインセラミックスの特長として次のようなものが挙げられます。
熱に強い(耐熱性)最大の特長です。硬い(高硬度)、すり減らない(耐摩耗性)特殊な金属と比べても優れています。
錆びない(不しゅう性)、腐らない(耐蝕性)、電気を通さない(絶縁性)プラスティックと似ていますが、熱が加わる
ところではセラミックスの独壇場です。軽い(軽量性)一般に、比重が鉄の半分です。いろいろな形に作れる(成形性)
希望する形に応じた方法で作れます。
セラミックスの材質や特性に改良が加えられ、長所を活かした適切な使い方がすすめば、有望な「夢の新素材」に
なることは間違いと思われます。
以上、取り留めがありませんでしたが、セラミックの概念的な説明をセラミック四方山話し(1)として投稿させて頂きます。

以上取り急ぎ投稿まで。  1999.5.18

NORITAKE R&D MIZUNOIWAO