気ままなベトナム旅行(1)             00.08.31 神野 卓三・雪美


マレーシアから帰って3年が経過した。聴力もそこそこ回復し、日本の堅苦しいビジネスにも慣れ、いいかげん飽き飽きしていた。このへんで自由で気ままな旅がしたい。そう思って会社の休日カレンダーと仕事のスケジュールを睨み、同僚の休暇予定覗き見して決めたのが,7月15日から23日までの9連休。こんなチャンスは二度とない。共稼ぎの妻を説得し、目指す大地はベトナムだ。
 通貨危機以来東南アジアの経済はマヒ状態となり、その影響で各国の治安も悪化していたが、ここにきて、韓国を筆頭にマレーシア、タイ、ベトナムの経済も回復してきたらしい。治安が回復し、物価も安いとなれば、今のうちに行きたくなるのが人情、いや、庶民の根性である。ベトナムは地理的には近いが、社会主義国というイメージが強く、近寄り難い国であったが、最近のドイモイ政策以来、外国企業の進出も著しく、観光客が急増している国である。日本からも各種のツアーがあるが、今回は、気まま旅行で心を癒す目的から、自由旅行で計画した。
旅行日程は関西からバンコク、ハノイ、ホーチミン、バンコク、関西戻りとし、バンコクで、友人に再会しゆっくり旅の疲れを癒す予定だ。
バンコク16日8:30発のTG682に乗り、2時間でハノイ到着である。
飛行機から見えるハノイの大地は赤い大地で、川はまるで赤い大蛇がくねくねと横たわっているように見える。ハノイの飛行場は、ただ、ローカルという感じで、飛行機からタラップをおりると、スカイブルーのアオザイ姿のベトナム美人が、これも同じ色のパラソル姿で出迎えてくれた。いい感じである。これで、楽しいベトナムの始まりなのだ。空気は懐かしいむっとした熱風ではあるが、京都の蒸し暑い空気に比べると、心地よい気分すら感じられる。私たちは個人旅行なので誰も迎えに来ていない。ガイドブックにあった空港タクシと価格交渉を開始した。
ところが、ここで驚いてしまった。バンコクのように、こちらのホテル名を告げると、いきなりそのホテルは高すぎる。こちらのホテルは安いと、パンフを示しての売り込みなのだ。そこを何とかクリアして、市内のホテルまで20$で決着。5$デイスカウント成功。これもガイドブックのおかげと満足してタクシーに乗り込んだのが、少々早とちりであったことに気づくのは20分後になる。周りは大地の中、高速道路並みのスピードでタクシーは走る。やがて、市街に入ると狭い道路に自転車の群れ。そこへ車が突っ込む。やたらクラクションを鳴らしながら突っ込む。自転車が来る。対向車が来る。自転車の荷台に3m程の鉄材を積んで走る人。雑貨の大きな竹の籠を積んでいる人。とにかく見事な自転車の流れと車の調和。スリル満天で到着したホテルはと見ると、なにやら怪しげなホテルで、若い兄ちゃんが「いらっしゃい」と言っているではないか。これにはビックリ。今まで、タクシーメーターと違う料金を請求されたことはあるが、行き先まで変更させられたことは無い。紳士的な態度では、らちがあかず、ここは、威圧的に作戦変更。何とかタクシーを動かし、10分程走り、無事予約のホテルに着いたのだが、4年前の新築高層ホテルは、今はどうしたのか外壁の色も褪せ、ロビーも暗く活気がなく、若いフロントのベトナム娘が、カタコトの英語で、「パスポート預かります」との言葉。無事到着を祝いながら、気持ちは興ざめしている自分が見えてしまう初日であった。